この記事の目次
〈症状〉軽症糖尿病で症状なくとも大血管障害に要注意 〈原因〉遺伝的素因の影響が大きい。そこに日々の生活習慣が関与する
〈治療〉薬の選択肢は幅広く、担当医師とよく相談して
〈予防〉家族に糖尿病がいたら早めに検査・予防

〈治療〉薬の選択肢は幅広く、担当医師とよく相談して

治療の基本は「食事療法」と「運動療法」です。しかし多くの場合「薬物療法」が必要です。食事療法は身体に必要な栄養素を必要なだけ摂り、糖質に偏らない食事を心がけます。そして、野菜から先に食べる「ベジファースト」に加え、ゆっくり20分以上かけて食べるのが基本。ただ、最近は野菜を食べる前に少したんぱく質を摂るのが良いとわかりました。例えば刺身を食べる、牛乳を飲むなどをすると、小腸上部からインクレチンというホルモンが分泌されます。これはβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑えます。また、運動療法では筋肉を増やすことでブドウ糖を取り込みやすくし、血糖値の上昇を抑えるのです。

食事・運動療法をきちんと行ったうえで薬物療法を行うと薬の効きが良くなります。薬物はこの10年非常に進化しました!第1 選択薬は「ビグアナイド薬」が世界的に推奨されています。これは肝臓でブドウ糖が造られる「糖新生」を抑えます。これで効果がなければ「DPP-4阻害薬」。日本の糖尿病患者さんの60%以上が服用しています。インスリンの分泌を促すインクレチンはDPP-4という、内臓脂肪などから造られる悪玉の酵素ですぐに分解されてしまうため、この分解を阻害する薬です。そして、「SGLT2阻害薬」は余分なブドウ糖を尿と一緒に出してしまう薬。ただ、尿糖により尿路・性器感染症になる方がいるので、女性は特にカンジダ膣炎のかゆみなどに注意が必要です。

このほか、「ブドウ糖の吸収を遅らせる薬」や、不足しているインスリンを注射で補う「インスリン製剤」、「GLP-1受容体作動薬」という体重も減少し易い注射製剤などがあります。心臓・腎臓の「ハイリスク」の方ははじめからSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を使う方向で欧米の糖尿病学会のガイドラインも変更されています。

糖尿病はお薬無しに治るような生やさしい病気ではありません。それからをこのように糖尿病の薬物療法は多岐にわたり専門的になっているので、主治医と話し合って最善の薬を選択しましょう。糖尿病の治療のポイントは、まずは適正な薬を小出しではなくしっかりと使い、空腹時血糖が正常になる位コントロールを良くします。そうしたら主治医と相談しながら治療薬を減らすのです。

写真を拡大 写真を拡大 図:糖尿病治療の目標

糖尿病治療ガイド2022-2023(文光堂2022年)より引用