軍事作戦と動物紹介文が新聞紙面に並ぶ

この後、38年5月1日付『読売新聞』は、「ワタクチのお姉さま/なぜ亡くなったの/毎日泣いている支那熊(パンダ)」という見出しで、シカゴ・ブルックフィールド動物園のスーリン死亡のニュースを報じている。

この記事はスーリンとメイメイの写真計七枚を、半面を使って掲載した。それぞれ、「ハンカチかんで…/籠(バスケット)に隠れたり/お掃除したり/お湯に入ったり/牛乳のんだり/体操もします」とキャプションをつけて可愛らしく紹介している。

また、スーリンとメイメイを姉妹に見立て、「優しい優しい、大好きなお姉さまに抱かれて、子守歌を歌っていただいたり、ミルクを飲ませてもらったことが悲しく懐かしく思いだされてなりません」とセンチメンタルなトーンでメイメイの悲しみをつづっている。

40年6月30日付『読売新聞』では、「蔣介石の命のつな/蔣援(えんしょう)ルートとは?」という軍事解説記事に並んで、「パンダ君の馬乗り」なる記事が掲載された。

どの動物園かは明記されていないが、同記事は木馬で遊ぶパンダの写真を三枚掲載し、口上風のおどけた解説文で構成されている。

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ここにお目見得いたしまするは、ヒマラヤ生れのパンダ君!(熊猫のこと)/お馬に乗るのが何より大好き。今日も今日とて愛馬を庭にひき出して。オットット……あぶないあぶない倒れそう。/そんなら、あっちがわからだ。ビョンと跳びつくお馬の背。/とうとう首尾よく乗りました。皆さんゴカッサイをねがいます。

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どちらも中国西南部に関する情報として一括りにされたのだろうが、戦争相手の軍事作戦に関する記事とコミカルな動物の紹介文が並ぶ紙面からは、不思議な印象を受ける。