日本最古のパンダ報道

戦前の日本の新聞でも、何度かパンダ関連のニュースは報じられた。中国が抗日プロパガンダに利用し始める以前、1937年〜40年頃の報道は、いずれも好意的である。

『中国パンダ外交史』 (著:家永真幸/講談社選書メチエ)

筆者が見た限りで、日本における最古のパンダ報道は、37年8月8日付『朝日新聞』夕刊の「珍獣の婿探し/女探検家来る」という記事である。

これは、第一章で紹介したハークネス夫人の記事だ。ハークネス夫人は37年に二頭目のパンダを捕らえるべく、アメリカからプレジデント・フーヴァ号に乗って中国探検へ向かった。その際、途中で寄港した横浜で新聞取材を受けたのだ。

ハークネス夫人は、パンダについて「私によくなついていてそれはそれは可愛いものです」とコメントを残している。

なお、記事は「スーリン」を間違って「スーソン」と書いている。なじみのない名前だけに、写し間違えたのだろう。

30年代の日本の動物園にとって魅力的な珍獣はゾウ、カバ、ライオン、トラ、クマ、シロクマ、ラクダ、シマウマ、ワニ、アザラシ、オランウータンなどであった。パンダにはまだ、動物学界さえ今日のような高い関心を示していなかった。