その支援の輪に、私は胸が熱くなった。一方で、やるせない思いにもなった。これだけの国や人びとの善意。その思いを踏みにじるかのように、戦闘は続いている。

イリーナ・サブコさん(39歳)は、夫と3人の幼い子どもとともに、中南部クリヴィー・リフから避難してきた。ゼレンスキー大統領の出身地でもある。

現在のオデーサの仮住まいのアパートは、知人が提供してくれた。

「住むところがあるだけでも恵まれたほう」と話すが、タンスのなかにはわずかな衣類と身の回りの品しかなかった。

以前はスイミングのコーチをしていた。夫は建築業。7歳の双子の息子と、5歳の娘との暮らしは、幸せいっぱいだった。スマホの写真を見せてくれた。子どもたちと行った海水浴、レストランでの楽しい食事。

クリスマスの団らんの姿を撮った2ヵ月後、ロシア軍がウクライナに侵攻した。町にも砲撃の音が響くようになり、「とにかく子どもを守りたい」と避難を決めた。収入の手立てを失ったため、生活は楽ではない。

最近、夫妻は子どもたちの変化に気づいた。振る舞いが粗暴になったうえに、兄弟どうしで遊ぶとき、「爆弾だ!」と物を投げ合うのだ。

ある日、息子たちが公園から泣きながら帰ってきた。近所の子に「おまえはプーチンだ」といじめられたという。

「それまでプーチンなんて名前すら知らなかったのに」

子どもにまで戦争の影響が及んでいることを、夫とともに案じている。