オデーサから400キロ離れたクリヴィー・リフには、イリーナさんの高齢の両親が今も残る。彼女はスマホを取り出し、両親とつないでくれた。
「おじいちゃん、おばあちゃん、元気?」と孫たちが呼びかける。
イリーナさんの母ニーナさん(67歳)と父ヴィクトルさん(72歳)の笑顔が、スマホの画面に映った。私は、町の状況を尋ねた。
「残っている人の多くは60歳以上です。故郷にとどまり、家を守りたいとの思いです。遠い地への避難はなかなか決断できません。防空サイレンが鳴っても、付近に避難所はなく、部屋の窓から遠ざかって、やり過ごすだけ」と心情を吐露した。
商店は開いているものの、食品やガソリンなどの価格は侵攻前の2倍近くに値上がりしたという。戦争の負担は最も力なき人びとに重くのしかかる。
「平和になり、この町で孫たちと一緒に暮らせる日が来るのが願いです。ただそれがいつのことになるのか……」
ウクライナ各地で人びとが離れ離れになり、家族に思いを募らせている。ロシア軍に制圧された地域では、再会すら叶わなくなった住民もいる。