別名「長寿菌」

酪酸菌は、ほかの菌と同じく大腸内に存在し、水溶性食物繊維をエサに「酪酸」を生み出します。理想的な腸内環境を作ることから、「究極の善玉菌」と呼ばれているのです。

その理由は2つ。1つは酪酸が大腸を動かす栄養となることです。人の細胞は、血液と一緒に運ばれる酸素や栄養をもとに活動していますが、大腸は酪酸をエネルギー源にしています。そのため酪酸が多いほど大腸は元気に働けるのです。

2つめの理由は、酪酸が大腸内を低酸素状態に保つこと。実は善玉菌は酸素が苦手で、大腸が低酸素であるほど、住みやすい環境になります。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、酪酸菌のおかげで生きていけるとも言えるでしょう。

こんな面白い研究結果があります。古くから日本屈指の長寿地域として有名な京都府京丹後市は、100歳以上の人口が全国平均の約3倍。そこで65歳以上の元気な高齢者の腸内細菌を調べたところ、酪酸菌が多く存在していることがわかったのです。このことから、酪酸菌を別名「長寿菌」と呼ぶようになりました。

さらに、酪酸菌が多い人ほど「主観的健康感」が高いとも言われています。主観的健康感とは、自分は健康であると感じること。実はこの感覚は医者の診断よりも正確だと言われており、幸福感にもつながる重要な感覚です。

このように酪酸菌は腸内環境を整えるだけでなく、体と心の健康を底上げするのに一役買っていることが徐々にわかってきました。