姉との絶縁の序章にすぎない
父親がいよいよ危なくなった際、サオリさんは姉に「お父さんに会いに来てあげて」と長い手紙を書いている。しかし姉の答えは「特に用事がないから行かない」。「さすがにその時は頭の血管が切れるかと思いました」とサオリさんは声を荒らげる。
「父はそれからしばらくして亡くなりました。その頃、私は収入が不安定だった姉に仕事先を紹介したのですが、彼女はいい加減な働きぶりだったうえ、私に無断で勤務先を退職。紹介先に多大な迷惑をかけてしまったのです。ほかにも私の留守中に家に来ては母親にお金をせびるなど、やりたい放題。我慢も限界でした。姉に会ったのは、父が亡くなった8年前が最後です」
昨年、サオリさんは母と住んでいた3LDKのマンションを売却し、一人で1Kの部屋に移った。認知症になり施設に入った母の介護費用と、自身の老後資金を捻出するためだ。オリンピック前ということで、マンションは高値で売れた。しかし、これは姉との絶縁の序章にすぎない。
「引っ越しにより、姉にはもう私の住まいがわからなくなった。もちろん母が姉と連絡を取ることはかまいませんが、私の住所は教えないように伝えています。実は最近、転籍の手続きも取ったんです。そして、あと2年で定年を迎えれば、姉が私の会社を通じて居場所を辿ることもできなくなる。あと2年で完全に縁が切れる……、と今はそればかり考えています」