すぐに治る炎症と体をいじめ続ける炎症

風邪のときののどの痛みや虫刺されの症状のように、一時的に起きる炎症を「急性炎症」と言います。風邪で熱が出るのも、ねんざをして患部が腫れて痛むのも、急性炎症の症状です。

こういった急性炎症の典型的な症状は4つあります。それが、「発赤(ほっせき。赤くなる)」「腫張(しゅちょう。腫れる)」「発熱(熱が出る)」「疼痛(とうつう。痛みがある)」で、これを炎症の4徴候と言います。

ハチに刺されると、赤く腫れて熱を持ち、ズキズキ痛みますが、これはまさに炎症の4徴候です。体を守るための「急性炎症」なぜ、このような炎症症状が起こるのかというと、体に侵入してきた細菌やウイルス、毒素などの異物を退治して、傷ついた細胞を修復するためです。ハチに刺されたときを例にとって説明しましょう。

ハチに刺されると、ハチの針から皮膚の中にハチ毒が注入されます。すると、その刺激によって血管が広がって血流が増えたり、血管壁の透過性が高くなったりします。それは毒素を排除するために必要な免疫細胞(白血球など)や傷を治すために必要な物質(血けっ漿しょうたんぱく質など)を、血液に乗せて患部に運ぶためです。

結果、ハチに刺された部分に血がたまり、運ばれてきた細胞や物質もたまるので、傷の周辺が赤くなって熱を持ったり、腫れたりするのです。

ハチに刺された部分に血がたまり、運ばれてきた細胞や物質もたまるので、傷の周辺が赤くなって熱を持ったり、腫れたりする(イラスト提供:イラストAC)

また、炎症が起こると痛みを引き起こす物質が出て、傷が痛みます。

痛みや腫れは、私たちに「体が大変なことになっていますよ」と、危険を知らせるシグナルの役目も果たしています。以上のように、炎症は本来、体を守ろうとする、正常な免疫反応なのです。そのため、傷ついた細胞が治れば、炎症もおさまります。