やれることはやれるうちにやっておけ
健介 先々については、前からよく話をしてきたけど、このところとくに、老後について二人で話すことが多いね。
北斗 うん、今のうちから考えておかなくてはいけないことって、すごくたくさんあるじゃない。(2017年は)年齢的にも、健介が50歳、私も今年50歳になる。半世紀の節目の今って、うちらにとってまさに考え時なんじゃないかな。
健介 そのうちやろうと思っている間に、どんどん年をとって、自分でできなくなっちゃうことも多いから。で、目下家中の照明器具をLEDに取り替え中。いっぺんにやると高くつくので、コツコツと数ヵ年計画でね。
北斗 すぐにやれることから手をつけたって感じかな。若い頃、「こんな家に住みたい」という思いを詰め込んで、田んぼが広がる埼玉の田舎にドーンと建てた今の家は、デカくて電気がいっぱいついていてめっちゃ明るい。その分、電気代もめっちゃ高い。でも、それが老後の自分たちの首を絞めるだけでなく、子どもたちの首も絞める可能性がある。あたしたちは今おかげさまで仕事をたくさんやらせていただいているから、クソ高い光熱費の負担になんとか耐えられる。けど、二人の子のどちらかが将来あの家に住んで生活していくのは、やっぱりきついだろう。
健介 まあ、ずいぶん先の話ではあるけれど……。
北斗 いやいや、人生何があるかわからない、明日ミサイルが飛んでくるかもしれないぞ。
健介 あああ、そんなことは言っちゃダメ。(笑)
北斗 あたしは、やっぱり病気をしたことが大きくて、人生なんていつなんどきどう転ぶかわからない、と思うようになった。遠い先だと思っていたことが、実はそうじゃなくて、明日起こるかもしれない。だから、やれることはやれるうちにやっておけ、と自分に言い聞かせてるんだ。
健介 チャコ(北斗さんの愛称)は病気になってから、ずっと「もしもの場合」を想定して動いていたね。
北斗 あたしがくたばっても、残された家族が困らないように、とその一心だった。預貯金や保険、ローンなど、一冊のファイルにまとめて、健介と健之介に説明したよね。
健介 僕は、チャコがいなくなるなんてことは絶対考えたくなくて、ただ、どうしよう、どうしよう、って、テンパってたなあ。
北斗 ま、男なんてそんなもんだよ。