「(子どもには)「面倒見なきゃ」と、重荷に感じさせたくないよね」

 

北斗 本音を言えば、子どもたちのどちらかだけでも近くに住んでくれたらなあ、とは思う。でも、お嫁さんに面倒かけたくないんだよな。

健介 「面倒見なきゃ」と、重荷に感じさせたくないよね。

北斗 基本、同居はしないつもりだけど、もしも、どちらかの夫婦と住むことになったら、そのときは二世帯住宅に建て替えだな。お互い気を使いたくないし、もっと食いたいのに食わせてもらえなかったら、絶対イヤだもんね。

健介 それはイヤだ。

北斗 だから、金を貯めるんだよ。お金があれば、要介護になってもプロの手を借りることができる。同じ敷地内に小さい家を建ててもいい。がんばって貯めような。

健介 うん。そうだね。

 

二人で手をつないでデイサービスへ

北斗 でもさー。二人で暮らしていて、健介に倒れられたら、あたし絶対ムリー。こんなデカい人をお世話できないよ。でも、この人をどこかに預けたら、絶対ベッドに縛られると思うんだよね(笑)。だって暴れられたら手に負えないじゃない。

健介 縛られる? え、それ、どういうことよ? 暴れないよ。

北斗 いやー、そう思っていても暴れちゃうんだよ。

健介 ………。

北斗 ま、それじゃあまりにかわいそうだから、あたしが元気でいるうちに健介が要介護になったら、あたしが家で面倒を見る。それは決めているんだ。うちで飼ってあげるから安心して。

健介 「飼ってあげる」って。(笑)

北斗 もちろんヘルパーさんの手も最大限に借りる。そうやって、できるだけ自分の負担を軽くして、元気に楽しく、ずっと健介のそばにいたいんだ。

健介 わかる。逆だったら、僕も絶対そうするよ。

北斗 子どもたちには面倒はかけない。パパとママは自力でがんばるし、いざとなったら老人ホームに入るからって伝えてある。

健介 それを言っておくと、子どもの気持ちが軽くなるよね。

北斗 そうそう。子どもやお嫁さんに面倒かけるくらいなら、自分のお金でプロに頼んだほうがよほどいい。

健介 そして、できるだけ長く二人で暮らしたいね。

北斗 うん。二人で手をつないでデイサービスへ行こうぜ。

健介 いいねえ。

北斗 でも、あの世にはいっしょに逝けないんだよな。最後はどちらか一人になる。

健介 言わないで~。考えたくない。

北斗 まあ、先々を考えても暗くなるだけだから。幸いうちらは親戚がそばにいるわけだし、地域にも居場所があるし、ペットもいるだろう、きっと。

健介 そうだね。

北斗 なんか今日、あたしが98%くらい喋った感じだなあ。

健介 だって、口を挟もうとすると「黙ってろ」って言うんだもん。

北斗 黙ってろ!

健介 でも、僕、こういうの好きなんだよね。チャコが喋っていると、僕もうれしくなっちゃうんだなあ。

北斗 このやろう! きれいにまとめるんじゃないよ!