「保存する資料を整理しながら、忘れていたことが昨日のことのように蘇ってきて心がパーッと華やいだり、『よくやってきたものだ』とねぎらい合ったり。とてもいい時間でした」
3年前、家のリフォームを機に、大量のモノを整理した岩下志麻さん。結婚、子育て、女優としてのキャリア……。自身の半生をたどるような作業のなか、思わぬ発見もあったという(構成=丸山あかね 撮影=下村一喜)

今後のことを考え書斎を1階に

2019年に、築33年になる自宅をリフォームしました。家を建てた頃は、私たち夫婦のほかに、両親と娘、住み込みのお手伝いさんが2人という大所帯。ですが、両親が他界し、娘が嫁いだ後は夫婦とお手伝いさん1人の暮らしになりました。かなり前から無駄なスペースが多いなと気になっていたのです。

一大決心したのには、年齢的な理由もあります。私より10歳年上の篠田(映画監督の夫・篠田正浩さん)は90を間近に控えていました。今後のことも考えて、2階にある篠田の書斎を1階に移したほうがいいだろうということになったのです。

新たに1階にこしらえた部屋は、書斎と寝室を兼ねることに。篠田は「書籍に囲まれて死にたい」というほどの本好き。とはいえ、さすがに危ないのでベッドがある側の壁には何も置かないと決め、それ以外の壁は本棚にしました。

図書館のような部屋になったけれど、篠田はこれでいいのだと気に入っています。リビングもキッチンも食堂もお風呂も1階にあるので、篠田は水平移動をするだけで済むようになり、私としても一安心です。

一方、私の部屋はあえて2階に残すことにしました。階段の上り下りが運動になるかなと、そこは自分に厳しく(笑)。ただ、部屋と洗面所が離れていて不便だったので、洗面所とお手洗いを寝室の隣に作ることにしたのです。

ほかにも壁紙を貼り替えたり、最新型のシステムキッチンにしたりと、あれこれ欲張りました。3ヵ月以上、家に暮らしながらのリフォームだったのですが、思い切ってあのタイミングで手をつけてよかったですね。使い勝手のいい家になりましたし、新しい間取りは新鮮。家だけではなく心までスッキリした気がします。