安売り競争に加わらなかったモスバーガー

もっとも、その時代の安売り競争はハンバーガーチェーンや外食産業にかぎったことではありませんでした。

ディスカウントストアや郊外型の紳士服チェーン、食料品、清涼飲料水などでも、それまでには考えられなかった安売り競争が繰り広げられ、それは「価格破壊」と呼ばれ消費者には歓迎されました。もちろん、その陰では安売り競争を戦えない中小規模の企業や小売店が淘汰されていきました。

『「おいしい」を経済に変えた男たち』(著:加藤一隆/TAC出版)

このとき、櫻田さんは安売り競争には一切かかわりませんでした。

モスでもハンバーガーは2009年に220円から160円に一度値下げこそしたものの、モスバーガーは300円前後、テリヤキバーガーも同様です。安売り競争を「ひでえものだ」と徹底的に批判していました。

他社と比較して原価率の高いモスバーガーが、三等立地でもお客さんがわざわざ来てくれる味を保つためには、安売り競争に加わる選択肢はなかったのだと思います。