異常な時代を経てモスバーガーが得た《ボーナス》

安売り競争は各社のブランドイメージを傷つけただけでなく、無理な安売りで経営体力も奪いました。そうしたなか、唯一、ブランドイメージを傷つけることなくあの異常な時代を乗り越えたのがモスバーガーでした。

乗り越えただけでなく、結果的にボーナスまで得たのだと私は思います。ボーナスとはほかのハンバーガーチェーンとの差別化です。

もともと、モスバーガーはテリヤキバーガーやライスバーガーなどの主力商品で和風バーガーのイメージを築き上げ、ほかのハンバーガーチェーンとは一線を画していました。が、安売り競争を経て、差別化は一層明確になりました。「高いけど、おいしい」「ほかのハンバーガーチェーンとはカテゴリーが違う」といったイメージです。

そして、そのブランドイメージは今日まで保たれています。ハンバーガーの価格はマクドナルドの倍ですが、それでも売れています。

【写真】創業50周年を記念して、モスバーガーは創業の地「成増」とコラボ。3月8日から4月3日までの間、ホームと南口の駅名看板が「なりもす駅」に変わった(写真:編集部)

※本稿は、『「おいしい」を経済に変えた男たち』(TAC出版)の一部を再編集したものです。


「おいしい」を経済に変えた男たち』(著:加藤一隆/TAC出版)

非常で残酷な資本主義を生き抜きたいなら、この創業者にたずねよ!

いまや300万人が働き、市場規模30兆円を誇る外食産業。それは金融などのように「護送船団方式」で守られた産業とは違い、誰にも守られず、生存競争に明け暮れた剥き出しの資本主義そのものだった! 歴史を紐解けば戦後直後の料飲禁止令、農産物の輸入規制と自由化の波、さらには食と安全をめぐるさまざまな問題や、「ブラック」批判など、数々の苦境を乗り越え、生き延びてきたのだ。そんな、これまで戦後日本経済史では見向きもされなかった、「おいしい」を経済にしてきた「50年続く飲食チェーン」を築き上げた6人の異端の外食創業者たちの情熱と苦闘、そして経営術に、長年業界団体で数々の苦難に遭遇してきた業界の生き証人が迫る。