男性と同じように仕事をする女性がとにかく少なかった

今なら炎上確実案件。でも、こんなことが「普通」だったのは、カラーテレビのなかった時代の話ではなく、男女雇用機会均等法が制定されたあとの話で、スマホはなかったけどガラケーはあったころ。遠い昔ではないですよね。

『男尊社会を生きていく昇進不安な女子たちへ』(著:下河辺さやこ/主婦の友社)

紆余曲折を経たあげく、小学館に入社した私はパンツスーツを颯爽と着こなすTHEキャリアウーマンをイメージした『Ogg i』や『Domani』の編集者として多くの働く女性に出会い、ファッションや美容だけでなく、キャリアについてもたくさんのお話を伺うことになりました。

この取材、やはり当時は時代が時代ですから、「キャリアウーマン」を探すこと自体がひと苦労。男性と同じように仕事をする女性が一般の企業にはとにかく少なかったんです。

多くは医師、弁護士、教師などのスペシャリストかマスコミ勤務なものだから、どうしても記事に偏りが出る。編集長に「マスコミ以外の企業に勤めているキャリアウーマンを取材してきて」と言われて途方に暮れたことをよく覚えています。

『Domani』では当時珍しかったワーキングマザーにフォーカスした「産みたい。でも…」という連載を立ち上げ、多くの反響をいただきました。2004年くらいのことです。

21世紀になっても、女性たちはどうにか仕事を手に入れたとしても、子どもを持つことによって手放さなければいけないのが現実だったから、その悲痛ともいえる声に共感が集まったんです。

今はだいぶワーキングマザーが普通になってきました。状況は少し改善されたと言えるかもしれません。それでも「仕事と出産・子育て」をめぐる問題はまだまだたくさんあります。

体力があるとかないとか、論理的だとか感情的だとか、会議が長くなるとか(!)、いろいろなことを言う人がいますが、仕事をする上で男性と女性の決定的な違いはただひとつ。出産する可能性があるかどうか。