「悲しみや怒りというのは、心の傷を癒やす力があるんです。」(清水先生)(撮影:鈴木慶子/写真提供:ビジネス社)

怒りと悲しみがもたらす力

清水 そもそも怒りというのは、自分が「こうあってほしい」「こうあるべき」という「べき」論があって、それが満たされないときに起こる感情です。私がカウンセリングで患者さんのご相談を受けるときも、「この怒りの正体は何だろう」と思うことがよくあります。「悔しかったんですね」と受け止め、その悔しさの理由を話していただくところから始めます。

堀さんの場合は「早期発見してもらえなかった」と怒りの正体は明確です。もし、もっと早く見つかっていれば、堀さんにとって大切な、話すことや歌うことに影響が生じなかったかもしれないと感じているわけですから。

がんの発見の遅れについて怒りを持ち続けることは多くの人にあることです。

この怒りを飲み込むのは相当大変なことですが、堀さんの場合、ご主人が一緒に怒ってくれた。そのことは非常に意味があると思います。

 主人が言うには、人間だったら絶対にどこかに罪悪感があるはず。あのときに気づいてあげられなかったということを、彼は一生背負って生きていくことになる。そのほうがつらいだろう、だからもう僕らは忘れようって。

そうやって私が気持ちを切り替えるためのものを、主人が差し出してくれたわけです。