すべての力を発揮するために
2018年3月末。いよいよW杯開催年に入り、6月の大会開催まであと3ヶ月。ヨーロッパで行った国際親善試合の相手は、マリとウクライナでした。
マリ戦は1対1と引き分けましたが試合の内容は不完全燃焼といった印象で、格下に引き分けるのが精いっぱい。DF長友佑都は「今日の試合内容ではW杯で勝つのは厳しい」とメディアに対してコメントしています。
この発言を報道で知ったハリルホジッチ監督は、会見で「何か問題があれば内部で解決する。外部への発言は良くない」とくぎを刺しました。
しかし、チーム内の雰囲気は徐々に周囲に漏れ出てくるものです。「選手たちが試合後に監督批判を口にしそうだ、関係が破綻しそうだ」という情報は私の耳にも入ってきました。
次のウクライナ戦は、1対2で負けました。
私自身はその時、東アジアサッカー連盟の仕事があり現場に入ることができなかったためテレビで試合を観ていました。選手たちの態度や試合後のインタビュー、語られた言葉や振る舞いが後ろ向きで投げやりなものに感じられ、とても気になったことを覚えています。
そしてウクライナ戦の直後、現地スタッフからこんな電話が入ってきたのです。
「選手たちだけで緊急ミーティングをしています。協会として何らかの対処が必要です」
選手と指揮官の溝はもはや埋めがたいものになっていて選手たちは「俺たちだけでやろう」と言っている。それは、「監督が機能していない」ということを意味します。
チームにもはや司令塔となるべきリーダー、いわば監督が不在の状態となる寸前だったのです。
W杯での戦いとは、そんな不安定な状態で勝てるようなものではありません。
持てる力、ありとあらゆる能力を結集して臨まなければならないのです。並み居る強豪を前にして、日本の悲願であるベスト16、ベスト8に入るために、今すべきことは何か。
答えは明らかでした。