責任を引き受ける覚悟はできていた

日本チームはすべての力を結集させなければならない。もし今の状態が続くとすれば、私が取るべき対処は一つだけです。

私は決断を下しました。他人から「独裁者」と言われようが、ここは覆せない。自分一人で決めました。それがJFA会長としてのリーダーシップでした。

その結果責任も、私が負う。迷いはありませんでした。W杯で結果を出せない、と確信したからです。

会長の専権事項として監督交代を決意し、ガバナンス上適切なプロセスを踏みました。理事会に諮って理事たちから追認という形で合意を得て最終的に決定しました。理事会に対してはとことん説明を尽くしました。

西野監督就任会見にて。向かって左は田嶋幸三日本サッカー協会(JFA)会長。2018年4月12日(写真:『批判覚悟のリーダーシップ-日本サッカー協会会長秘録』より)

W杯の舞台で新監督の下、日本代表チームは勝てるのか。

もし、直前で監督を交代させた結果、負けてしまったら?

それは私の判断が間違っていたということです。即座に会長である私が辞めるべきである、ということです。

結果がすべてを物語る。

責任を引き受ける覚悟はできていました。

※本稿は、『批判覚悟のリーダーシップ-日本サッカー協会会長秘録』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


批判覚悟のリーダーシップ-日本サッカー協会会長秘録』(著:田嶋幸三 (著)/中央公論新社)

リーダーは傷だらけで孤独。毎日ストレスが続く会長職を誰がやるのか? だからこそ、批判されてもブレない「芯」と明確な「ゴールイメージ」が必要だ――2016年から3期にわたり日本サッカー協会会長を務める著者は、世界基準をめざして数々の改革を断行。日本代表監督の交代、福島県Jヴィレッジの原発事故対応、日本オリンピック協会副会長として携わったパンデミック下の五輪開催、コロナ禍の経済危機……。嫌われる覚悟で臨んだ数々の修羅場の舞台裏を、いま初めて明かす。また、著者が薫陶を受けた名指揮官(クラマー、ギャラント、オシム、ベンゲル、川淵三郎、岡田武史、佐々木則夫、西野朗、森保一ら)に学び、本物のリーダー像を探究。危機を突破して「ゴール」を決められる力とは何か? 数々の逆境を突破してきた末に、たどりついた境地。