認知革命という「見えない革命」
同書では「見たことも、触れたことも、匂いも嗅いだこともない、ありとあらゆる種類の存在について話す能力があるのは、私たちの知るかぎりではサピエンスだけだ」と述べられています。
まさにこれは、具体的なものではない抽象概念をホモ・サピエンスが手に入れ、『サピエンス全史』で人間の知性の夜明けとして語られている認知革命を指していると思われます。
認知革命とは、ある意味抽象化革命であり、これがホモ・サピエンスをホモ・サピエンスたらしめるために重要な役割を果たしていたことがわかります。
※本稿は、『見えないものを見る「抽象の目」――「具体の谷」からの脱出』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『見えないものを見る「抽象の目」――「具体の谷」からの脱出』(著:細谷 功/中公新書ラクレ)
本書は、ベストセラー『地頭力を鍛える』によって広く認知される「地頭力」や「アナロジー思考」、「Why型思考」等の思考力に関する著作で読者を獲得してきた細谷氏の最新書き下ろし。著者が思考力を鍛えるために用いる「具体と抽象」のテーマに当てはめながら、この「見えないもの」を見えるようにするための考え方を提供します。いくつもの事例を読み進めることで、これまで見えなくなっていた視野が広がり、日々のコミュニケーションや仕事の計画等に関する悩みを解消するとともに、未来に向けて将来像を描くためのツールになる1冊です。