なぜグーグルは会社にジムやプールを備えているうえ”三食昼寝付き”と社員に対していたれりつくせりなのでしょうか(写真提供:Photo AC)

 

2020年より小学校で必修化された英語教育。国際人として活躍する上では、その習得が不可欠と言えそうな英語ですが「自転車と同じで、英語は単なる手段。なので『英語ができる子』になることを目的にしてはいけない」と断言するのが、元グーグル米国本社副社長・前日本法人名誉会長の村上憲郎さんです。31歳から英語を勉強し、世界的IT企業で副社長にまでのぼりつめた村上さんいわく「人類みなが立ち向かっている課題について、日本はそもそも気づいてすらいない」そうで――。

質問ばかりするようになった息子

日本の社会はこれまで、周りの人間とは違う異質な思考をする人間を、ずっと排除してきました。

例をあげるなら私の息子です。6歳でアメリカの小学校に入学し、私がDECの日本法人に帰任するときに、10 歳で、日本に連れて帰りました。というのも、日本の親戚から電話がかかってきたとき、「This is **.」とまず英語で考えてからそれを日本語に訳して話すので、「これは**です」と言ってしまうようなことが起きていたからです。

帰国して、「帰国子女受け入れ校」という触れ込みの小学校に入りました。にもかかわらず、うちの息子は、すっかり厄介ものになってしまいます。なんでも、授業を受ければ質問ばかりするからです。

たとえば歴史の授業で「大化の改新」を習ったら、真っ先に手をあげて先生に質問します。

「その事件が、現在の日本にどうかかわっているのですか?」

そう言われても、小学校の先生のほうは困ってしまう。

「大化の改新は『蒸し殺し(645年)』と覚えればいい。歴史の授業とはそういうものだから」と言っても、納得しません。しょっちゅう授業を中断されるから、先生も最後には彼を無視するしかありませんでした。

こんな人間ですから、息子は日本の会社に定着できるわけがありません。

もう40代になっていますが、自分で起業をしたり、あるいは友人の会社の経営に参加したりして、ほとんど自由人のような生きかたをしているわけです。もっとも息子の場合は、好きなことをしてそれなりに収入を得ているのですから、日本にいても成功者だということはできるのかもしれません。