一般社団法人を立ち上げ、代表理事に就任
――― そんな中で妃乃さんは、震災後の子どもたちの表情が暗く、引きこもったり、暴力的なふるまいをする子が多いことに気がつく。こどもたちは苦しんでいる大人に気を遣い、表面上の笑顔の陰で実は心を閉ざしているのではないかと感じたという。
こんな表情をしているこどもたちをなんとかしたい。でも、私にいったい何ができるんだろうと考えたときに、やっぱりできることはダンスや歌だったんですね。ダンスや歌で目の前にいる子どもたちを笑顔にしてあげたい。そのためにはどうしたらいいか、と考えに考えて思いついたのが、「なりきりステージ」です。よく知られているお話の中でこどもたちが主役になり、さまざまな体験をしていく「なりきりステージ」は、ありのままの君を受け入れるよ! というメッセージをこめて上演しており、おかげさまで自治体や学校などからオファーをいただいています。
――― 脚本も演出も妃乃さん自身が担当して、ボランティアだけで活動を続けていたが、やがて経済的な限界が近づいてきた。そこで周りのアドバイスもあり、妃乃さんは一般社団法人を立ち上げ、代表理事に就任する。
宝塚の時代には思ってもみなかった今の生活です。でも、私はその都度、自分がやりたいことを導かれるままにやってきて、活動の内容は変わってはいるものの、心の中の強い思いは変わっていないような気がしているんです。宝塚で経験した「非日常」の世界は、いつも感動の連続で常に心が高揚していました。それでとてもハッピーだったんです。でも大好きな母を亡くして、今度は日常の中で、目の前にいるたった一人の人がハッピーになってくれるように活動していきたいと思うようになった。その思いが形を変えながら、私を動かしていると思います。