お金を使わなくなってから「センスがある」と言われるようになった

“センス”という感覚は私のような凡人には、手の届かない場所にあるものでした。実際、それを身に着けるためには、持って生まれた才能や環境、切磋琢磨などが必要になるのではないでしょうか。

救いなのは、「いいもの」「美しい景色」を見れば、磨ける部分もきっとあるということ。

ただし「見る」「観る」には、必ずしも「買う」という行為が付いてくる必要ありません。逆に「買う」ことで手に入れてしまえば、それに満足して「観る」「探る」ことをやめてしまうこともあるのかもしれません。それこそ、かつての私のように。

不思議なことにお金を使わなくなってからのほうが「センスがある」「おしゃれ」と褒められることが増えたようにも思います。

それはバラバラの「欲しい」を身に着けていく姿勢から、自分主体になったことで、いつしか統一感が出てきたためではないでしょうか。センスとは、つまり「自分らしさ」を見つけることなのかもしれません。

節約がきっかけであろうと「遠かった言葉に少しは近づいた」と思えるのは自己満足とは言え、やはり嬉しいものです。

12月、華やかになった街、おしゃれな人が繰り出すシーズンこそ、「素敵」を見つける絶好のチャンス。財布の紐を緩めることなく、そのセンスを磨くために、さあ出かけましょう。


71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』(著:紫苑/大和書房)

71歳、ひとりシニア。子どもたちが結婚してから60代で都内に小さな中古住宅を買った紫苑さん。フリーで仕事をしていたため、年金はわずか月5万円と、お金はないけれども不安はないし、今が一番幸せ。あるものを工夫する豊かで楽しい日々をご紹介。