子どもは親を選べない。私が幸せにしてあげたい

子どもの服や肌着、布団に茶碗、歯ブラシ――、何もかも一から揃えなければなりません。私も一所懸命働いて、ひとつひとつそれらを買い求め、子どもを引き取りに行く準備をしていました。そんな矢先、私は妊娠してしまったのです。

いま産んだら、わが子かわいさのあまり、施設にいる子どもを引き取れなくなる。そう考え、自分の子を水子様にしてしまった。つらくてつらくて、毎日泣きながら暮らしました。

それなのに夫は性欲を満たすために避妊をせず、その後も2回妊娠。同じ理由で水子様にしてしまったのです。産んであげられなくて本当にごめんなさい、と何回も何回も謝りました。

これ以上、自分の子を犠牲にしてはいけないし、私の体も限界です。けれど、離婚したら子ども2人は養護施設に入ったままになります。3歳と4歳の兄弟は、きっと母親の愛情がほしい時期です。見捨てることはできない、と葛藤する毎日を送っていました。

そんな私の気持ちも知らずに、夫は仕事も長続きせず転職ばかり。子どもは親を選べないのだから、私が幸せにしてあげなくては。それに、父の反対を押し切り結婚したからには、やるしかない。やれるところまでとことん頑張ろうと、意を決して児童養護施設へ迎えに行きました。子どもの顔を見て泣いている夫の姿に、ようやく親として頑張ってくれるはずだと思ったのです。

施設の園長先生は私が実母ではないとすぐにわかったようですが、「あなただったら、きっと親として大丈夫。子どもが二度と施設に帰ってくることのないように頼みます。子どもを引き取りに来る親は滅多にいないので、幸せにしてやってくださいね」とおっしゃいました。

後編につづく


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