体と心の健康維持がなによりの予防に

残念ながら現在のところ認知症が完治する薬はありませんが、近年は体と心の健康維持、生活習慣の見直しといった非・薬物療法で認知症の進行を遅らせる試みが注目を集めています。

体の健康維持で特に気をつけたいのが、生活習慣病の予防です。認知症の発症は60代半ば以降が多いのですが、脳内の変化はその20年も前から始まるといわれます。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、脳血管障害を原因とする「血管性認知症」のリスクだけでなく、アミロイドβの蓄積を促進しアルツハイマー型認知症になるリスクを高めることが明らかに。喫煙、大量の飲酒、肥満、偏った食生活、運動不足などの習慣を改め、適切な治療を行うことも予防には大切な心がまえです。

心の健康としては、うつ病による認知症発症のリスクは約2倍というデータも。適切な治療や家族のあたたかなサポートによって症状の軽減をはかることや、認知機能の低下が起きていないか注意する必要もあります。

また家族との良好な関係や、友人との会話、趣味のサークルに居場所や仲間を作ることなど、社会活動への参加も心の健康維持に役立つでしょう。

そのほか、見直したいのが運動。有酸素運動で脳の血液循環をよくすると、認知機能の向上に繋がります。ウォーキングであれば、一日10~30分を週3日ほどのペースで続けてみましょう。下半身の筋トレで歩行能力を維持することは、社会的孤立を防ぐだけでなく、認知症予防の観点からも効果的。食事では、低栄養にならないよう気をつけ、バランスの取れた食生活を心がけましょう。

特定の認知機能を高める「認知トレーニング」は、MCIや軽度の認知症の人には有効だと考えられています。ただし、好きでもないことを無理にやっても効果は期待できません。料理、楽器の演奏、絵を描く、間違い探しドリルをする、日記を書くなど好きなことに一所懸命取り組み、達成感を得るほうが認知機能の維持には役立つはず。

認知症の予防や進行を防ぐ対策として注目されている4つのポイントを次のページにまとめました。ぜひ参考にしてください。

高齢化が進むなか、認知症の研究は世界各国で進んでいます。治らない病気と諦めたり不安に思うより、つねに新しい知識や情報に触れ、自分や家族の状況を把握しておくことで上手につき合っていく。そんな未来を目指してみてはいかがでしょうか。