工場で働いていた時は、機械の歯車と化すような仕事に心も身体もくたくたになっていたという池田さんの夢とは?(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
源泉徴収義務者(民間の事業所に限る)に勤務している給与所得者(所得税の納税の有無を問わない)を対象とした「民間給与実態統計調査」が国税庁より令和4年9月に発表。それによると1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は443万円(対前年比 2.4%増)となっていました。しかしジャーナリストの小林美希さんいわく「現実には、年収443万円では普通の暮らしをするのが難しい」と言います。たとえば小林さんが取材した、東海地方で事務員を務める41歳の池田真紀さんの場合――。

町工場の仕事で月12万円、毎日がつらかった

少し前まで町工場で6年働いていたのですが、つらい6年でした。

入社当時小学生の娘と保育園の息子がいて、子どもたちに負担をかけないようにと、午前9時から午後4時まで勤務していました。最低賃金だったので、収入は多くても月11万~12万円でした。

機械でプラスチック製品を作るのに部品を入れる単純作業。毎日がつらくて、つらくて。自分がまるでロボットになったような、じきにAIにとって代わられるような仕事でした。

コロナで子どもの小学校が一斉休校になった2020年の3月からしばらくは、シングルマザーの私が子どもを見るしかなかったので、仕事を早退したり欠勤したりして対処しました。

その時に、休業補償の「小学校休業等対応助成金」が創設されたことを知りました。

この時点では、労働者からは申請できず会社が申請する仕組みだったので社長にお願いすると、他の子育て中の社員は実家に子どもを預けるなどして出勤していたので「特別扱いできない」と言って断られてしまいました。何度もお願いすると関係が悪くなって、最終的に辞めざるを得なくなりました。

縁があって美容系の会社の社長の秘書となり、事務作業や調査業務など、非正規ですが、職を得ることができました。

家の事情や市民活動を行っていることを理解してくれて、朝9時から午後2時半までの間のパート勤務で良いと言ってくれました。時給は900円になって、やっと最低賃金からは抜け出しました。

今も子どもが帰宅する頃には家で待っていてあげたいので勤務時間が短く、月収は9万円ほどですが、勤務時間は前より1時間半も短い。ストレスはないし、勉強になるし、自由度が高いので働きやすくて、とても充実しています。