サンタクロースのありがたさが薄れている世の中に

『サンタさんのゆめ』は32年経ったいま読んでも色あせず、心を打つ物語。サンタさんが疲れて、「サンタさんをやめたくなった」という視点がとてもユニークで、子どもだけでなく、大人が読んでも共感できる作品だ。

いまこそたくさんの方に読んでほしいな、と思っています。いまはもう、「サンタさん=お父さん・お母さん」だと思っている子どもがほとんどではないでしょうか。それに昔と違って、ネットで何でもすぐに手に入る世の中になっていますね。年に一度のクリスマスプレゼントのありがたみや感動が薄れてしまっているような気がしています。

サンタさんがサンタさんをやめたくなる、というストーリーは、もうパッと思いついちゃったんです。「サンタさんがサンタさんじゃなくなったらどうするんだろう」って。子どもたちがサンタさんを信じなくなって、サンタさんは自分の職業がなくなって、クリスマスの時期に街へ出たらどんな気持ちだろう、と。「サンタさんでなくなったサンタさん」っていう言葉がすごく気に入って、一気に物語を書きました。そして、はせがわゆうじさんが素敵な絵を描いてくださって、『サンタさんのゆめ』という1冊の絵本になったのです。

今回の出版にあたっては、あらたに「トナカイさんのゆめ」のパートを加え、『サンタさんのゆめ・トナカイさんのゆめ』というタイトルで生まれ変わりました。

サンタさんがいなくなっちゃったら、トナカイさんはどんな気持ちになるだろうと思ったんです。そうしたら、はせがわさんも「面白いね」って言ってくださって。2つ物語を合わせて1つの絵本になるように、それぞれの物語をシンクロさせて、「前から読んでも後ろから読んでも楽しめる」1冊にしました。トナカイが主役になっているクリスマスの絵本は、案外少ないかもしれないですね。

「年に一度のクリスマスプレゼントのありがたみや感動が薄れてしまっているような気がしています」と語る西島さん