ライブではファンからのメッセージも紹介しながらリクエストに応える(写真提供◎西島さん)

絵本も歌も受け取り手の解釈で楽しむもの

私は子どものころから、将来は童話作家になりたいと思っていたんです。中学生の時は、大学ノートに童話を書いて、よく国語の先生に読んでもらって批評していただいたりしていました。そのくらい、物語を書くことが好きでした。

ただ、作詞は苦手で……。歌手時代も作詞ではなく主に作曲を手掛けていて。私、性格的にすごいルーズなんですよ。曲は1つでいいけど、歌詞は、1番で終わらなくて、2番以降も続くでしょ。いくつも考えなきゃいけないし……。あと、作詞は曲に合わせて歌詞の文字数を合わせる必要もあって。そんな作業が苦手なんです。(笑)

こんな性格なので、昔からうちの父にもよく「お前は本当に中途半端だ」なんて言われてました。目的がはっきりすれば、パッと行動できるタイプなんですけどね。

2022年4月にははせがわさんとのコンビで『ふたごパンダのこころコロコロ』も出版。版を重ね話題になっている。老若男女幅広い読者に支持され、読む人に「ありのままでいいんだよ」というメッセージを伝えてくれる、温かい物語だ。

実は昔からこんな絵本を出したいと思っていました。この絵本には明確なストーリーはありません。はせがわさんが描くかわいいパンダの絵と、いくつかの言葉がポツンポツンと並んでいて、読む人が自分のなかでイメージを膨らませてもらえればいいんです。だから、読む時期や読み方によって、受け取るメッセージがどんどん変わることもある。 

受け取り手のとらえ方でメッセージが変わるという点では、歌の世界も同じだと思います。私の口から発せられた歌でも、それは私のものじゃなくて、もう聞き手のものなんですよ。だから聞き手の方はどういう解釈をしても自由なんです。

たとえば、「池上線」という私の曲があります。この曲は、作詞家が池上線で失恋した実体験を描いた歌ですが、聴いた方が必ずしも池上線をイメージする必要はないんです。地元の駅でも、むしろ電車とは関係なくても自分の体験と結びついてくれれば、それでいいと思うんです。絵本も歌と同じで、捉え方や受け取るメッセージは人によって違うから、自由に楽しんでいただけたら嬉しいですね。

『ふたごパンダのこころコロコロ』(著:西島三重子/中央公論新社)