亡くなった夫がかけてくれた言葉

実はこの作品を書いているときに、夫が膵臓がんで亡くなったんです。

夫の闘病期間中に、「ありがとう」とか、「おはよう」とか「お休み」といった、普段何気なく使っている言葉が、実は「幸せの呪文」なんだと気づかされました。

本の中に「ありがとう というと こころが やさしくなれる きがする」というページがあるのですが、これは彼が入院中に、看護師さんが実際にかけてくださった言葉でした。入院中、夫と私が看護師さん呼ぶたびに、無意識に「すみません」って言っていたんです。すると看護師さんが「そういうときはありがとうって言ってくださいね」と。

はっとしました。確かに「すみません」という言葉は、言う側は申し訳ない気持ちになりますし、相手にとっても負担になる。でも「ありがとう」と言えば、それだけでお互いの気持ちがあたたかくなりますよね。そんな思いを込めたページなんです。

夫はゲラの段階で読んで、「うん、可愛いね。いいね」と言ってくれて、本の完成を楽しみにしていました。でも、今年の1月26日に亡くなってしまったんです。病気がわかってからも、私が出かける時も車で送ってくれたり…。1年8ヵ月の闘病でしたが、担当医も驚くほど頑張って長く生きてくれましたね。

なぜか西島さんの前に現れ、ついてくる猫たち(撮影◎西島さん)

私は猫がすごく好きで、近くの東山湖で夫と地域猫の世話をしていました。いまも家に来る地域猫と、彼と過ごした静岡の御殿場で暮らしています。

新しい絵本のアイデアも練っているところです。昔から、曲のアイデアや、コピーライトなどをノートに書き留めていて、そこから新しいアイデアが浮かんできたりすることも。次回作が本になったら、たくさんの方に読んでいただけると嬉しいですね。

2冊と一緒に

サンタさんのゆめ・トナカイさんのゆめ
(著:西島 三重子 イラスト:はせがわゆうじ/中央公論新社 )

クリスマスがちかづくとプレゼントのじゅんびに、サンタさんは、いつも大いそがし。でも、ことしのサンタさんは、なんだかちょっぴりつかれてるみたい……。願いを叶えて自由になったサンタさんが見つけた“本当の幸せ”とは――サンタさんパート、トナカイさんパートの両面から読める1冊。 https://www.chuko.co.jp/special/santatonakai/

ふたごパンダのこころコロコロ
(著:西島 三重子 イラスト:はせがわゆうじ/中央公論新社 )

ころんころん。ふたごのパンダがとびたつ先は?「読むとやさしい気持ちになれる」「読み聞かせると、親子でこころが温まる」読み聞かせにも最適な、心温まる物語をお届け。