父親が突然大声で怒鳴る、義母に無視されている!?──このようなお年寄りの不可解な行動、実は「老化による体の変化」が原因でした。老いた親との上手なつき合い方を、『老人の取扱説明書』の著書のある平松類さんに聞きました。(構成=島田ゆかり)
シミだらけの服やカーペットにギョッとする
年老いた親にイラッとしたり、不安になること、ありますよね。たとえば久々に帰省すると家中が散らかっていて、埃だらけの様子に落胆したり、異臭がして「実家の臭いが変わった」と感じるかもしれません。あるいは、シミだらけの服やカーペットにギョッとすることも。
コミュニケーション面でも困ったと感じることが多々あるでしょう。都合の悪いことは聞こえないふりをする、突然大声で話し始める、約束を守れない……。これらの行動は、認知症や、年を取って偏屈になったというよりも「老化による体の変化」の可能性があります。
とくに、視覚や聴覚など、五感に変化が起きるので、生活のあらゆる場面で不便が生じ、物事への理解が曖昧になってきます。このことを知らずにいると、親に意地悪をされていると感じたり、認知症になったのではないか、と慌てたりすることにも。
私はこれまで10万人以上の高齢者と接した経験から、老人とのつき合い方の対処法を編み出しました。老化を止めるのは難しいですが、五感の衰えへの対策は可能です。
まず視覚ですが、老眼に加え、白内障になる人も増えます。まぶたが下がり、物がはっきりと見えなくなる人も。家の中が汚れているのは、「見えていない」からなのです。
次に聴覚。70代で半数近く、80代以上は約70%が難聴になります。難聴でなくても補聴器を使用すると、音が聞きやすくなるのでおすすめです。老人は無視しているのではなく、聞こえていないだけだと理解しましょう。