絵本は家族の思い出が蘇る残すべきもの

はせがわ 『もうじきたべられるぼく』がTikTokでも反響があったのはありがたいことですが、もともとは「PIBO」という絵本アプリに登録したときに、「いずれ紙にして出します」と言われていたので、「それならやりたい」と描いた作品でした。そこでは出版の話は立ち消えになりましたが、今回こうして出版することができて、やっぱり紙の本になったことが嬉しいです。インターネット上でなんでも見られて、データのやりとりが便利にできるようになっても、この絵本が大事だと感じてくれた人は、紙の本として持ってくれると思うので。絵本は、読んでいくとだんだん年季も入ってきて、味もありますよね。

山口 絵本は、わが家でも紙の本で読むことが多いです。子どもたちは、デジタルのiPadなどでも本を読んだりと、使いこなせる世代ではありますが、絵本に関しては紙の本。紙でページをめくっていくのも楽しいですし、はせがわ先生がおっしゃったように何回も読むと味が出てきて、小さい子だったら舐めた跡があったり、絵を描いてしまっていたり。それも含めて、絵本と共に子どもの思い出として残るので、これからも絵本は絶対に残すべきものですし、なくてはならないものだと思います。

はせがわ そういえば、ちょうど上の娘が生まれてハイハイしているぐらいのときに、人生で最初に自分の絵本が出版されたのでずっと取ってあるんですが、娘がかじった跡があるページもあって。(笑)

山口 わあ、なんて可愛い! 絵本って、家族の思い出が蘇りますよね。すべてその時々の「ここが好きだったな」「ここはページを引っ張られちゃったな」と思い出すことも。素敵な絵本を作るはせがわ先生は、もともと作家さんになるきっかけは、何だったんですか?

はせがわ 作家というよりも、イラストレーターといいますか。子どもの頃から、ちらしの裏によくイラストを描いていて、褒められることがそれしかなかったんです。あとは何をやってもうまくいかない。消去法でそれが残ったということが、一番の理由ですね。

山口 そうだったんですね。