この絵本はロングセラーになる

はせがわ 僕はだいたい1日に1回は散歩に出るんですが、散歩中にいろいろとストーリーを思いつくんです。『もうじきたべられるぼく』も、歩きながら考えていて。今は小さい子どもたちが苦しんでいることがあったら、そこに何かできないかなって、ずっと考えています。今後どんな本が描きたいかといえば、元気な人にはちょっと気恥ずかしい表現の仕方の気もするんですが、弱っている人や困っている人に照準が合ったものにしたい。

自分が作品を世に出した頃、当時は手紙、今はメールを時々いただきます。何かしら困っている人、ひきこもりの人から、メッセージをいただくことがすごく多くて。だから自然とそういう人の気持ちに応える内容にしたいということがあるのかもしれません。難病の小さな女の子からもらった手紙に、「ポシェットに入っているワンちゃんが大好きです」と書いてあって、次から、どの絵にもその絵を描くようにしたり。

山口 そうなんですね。

はせがわ そういう思いでこれまでやってきたので、僕は芸術家ではなく、誰かを喜ばせたいだけ。それも、今弱っている人やピンチな人が、少しでも気が楽になったらいいなということを一番の思いとして絵を描いています。自分もいろいろ、ありましたから。話すと長くなるのでやめますが。(笑)

山口 私もはせがわ先生の絵本を見ていたとき、心が弱っていたのかもしれないですね。 絵本を読んで鳥肌が立つなんて、本当に初めての経験。この絵本を人に伝えたい、自分から何かを発信をしようという衝動にかられたのは、きっと、はせがわ先生の「弱っている心に寄り添いたい」という気持ちがしっかり作品から伝わってきたからなんですね。私のまわりでも、みんな心を打たれて、はせがわ先生のファンになっています。この絵本は、ロングセラーになると思いますよ。

『もうじきたべられるぼく』

はせがわ そんなそんな……。(照れ笑い)

山口 なが〜い目で見ても、ずっと残る1冊だと思います。私の2022年、衝撃の出会い1位が、この絵本との出会いになりました。こんなに稲妻を浴びたように、まわりにも知らせたくなった絵本との出会いは初めてでしたし、「読者カード」を書いている自分にも驚きましたし(笑)。全員、私のように感動や衝撃を受けるかはわかりませんが、何かを感じてもらえればと伝えたいです。

はせがわ 今日は本当にありがとうございました。