2017年、91年の歴史に幕を閉じた久留米の老舗パン屋・キムラヤ本店前にて。思い出の味、お店との別れにちょっぴりしんみりモードの吉田さん(写真提供:講談社)
小劇場を中心に活動後、TV・映画などの映像へと活動の幅を広げる俳優・吉田羊さん。2022年で俳優デビュー25周年を迎えた吉田さんは、訪れた各地やふるさとの福岡などを巡りながら、得られた日々の食体験を雑誌『おとなの週末』に綴ってきました。その吉田さんがお正月に福岡へ帰省し、あれこれ食べながら感じたこととは――。

未だ完全再現することができない母特製の雑煮

或る年の正月休み。その年も各家族が集まり、正月料理に舌鼓。

目当てはやはり、未だその味を完全再現することができない母特製の雑煮。

ダシを取るところをもう一度見たいと、姉ふたりは台所に立つ母の後ろにべったり。私は、べったりとくっついた姉ふたりの後ろで、吉田家伝統のかまぼこをつまんでおりました。

吉田家お正月の味「雑煮」。父方の故郷・長崎の雑煮は上品なおダシで食べるのが特徴(写真:『ヒツジメシ』より)

 

その年の母のイチオシメニューは「里芋の煮しめ」。「今年はよくできとるやろ?」と、こちらが「うん」としか答えられないように聞いてくるのでちゃんと「うん」と答える親孝行の私。いや本当に美味しかった。