イノシシによる温泉発見の由来や伝説

●伊東温泉(静岡県伊東市)

伊東市史編さん委員会編集の『伊東温泉のうつりかわり』の中の「猪戸(ししど)温泉」の項に「往時此の辺は雑草の繁茂せる荒蕪地(こうぶち)なりしが、野猪の負傷(てお)へるもの往々此の叢中に来りて、傷処を癒すを見て始めて爰(ここ)に金瘡の特効ある霊泉の湧出なることを発見したりといふ。

猪渡(ししと)の名ある蓋(けだ)し之(こ)れがためなり。近世猪戸(ししと)に改たむ」とある。幕末から明治時代初期までは、村の温泉場名で、「猪戸の湯」「和田の湯」「松原の出来湯」と呼ばれていたが、明治時代半ばになり「伊東温泉」の名が広まった。

平成2年、伊東駅前の猪戸温泉通り商店街に、「イノシシの銅像」が建立された。

 

温泉地「伊東」と遠くに見える初島(写真提供◎photoAC)

 

※本稿は、『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』(中央新書ラクレ)の一部を再編集したものです。