原田 なぜここまで急激に円安が進んだのでしょう。

荻原 現在は世界的なインフレですが、欧米では金利を上げることで物価の高騰を調整しようとしています。一方、日本政府は、長期金利を0%に抑える大規模な金融緩和を続けてきました。

今、金利を上げると、国民は住宅ローンの返済額がアップしますし、企業融資の利子も上がる。株式市場も大混乱に陥ってしまうため、日本政府は低金利を維持することを決定しました。その結果、アメリカの金利政策とのギャップが生まれ……。

投資家は金利が高く儲けやすいドルを買い、利益が出にくい円を売る。だから円安が進んでいるのです。

原田 23年もその傾向は続くのでしょうか?

荻原 少なくとも日本銀行の黒田東彦総裁は低金利を維持すると明言しているので、彼の任期が終わる23年4月初めまでは、アメリカとの金利差は縮まらず円安は続きそう。貿易赤字や、経済成長力の弱さなども円安の原因の一つと言われていますし、日本の経済政策は打つ手がないという感じです。

原田 物価は上がっているのに給料は上がらない、という嘆きをよく耳にします。

荻原 岸田政権は、給料を上げた会社に法人税を下げるという政策を打ち出しましたが、この不況下では給料を上げられない経営者が多いのでしょう。そうなると、年金も上がらない。年金支給額は、現役世代の賃金に連動するので、この2年は連続でダウン。

入ってくるお金が増える見込みがないなかでの物価高です。さらに高齢者の医療費負担の引き上げをはじめ、健康保険料や税金など、出ていくお金が増えていますね。