テーマパークの夢世界を紡ぐことは、人を紡ぐこと

ディズニー・スプリングスの建築では、消防保安官とも密に連携する必要があった。

「火災の際に消防車をどう入れるかだけでも、考慮する点は山のようにあるのです。普通の人はあまり思いつかない点だと思いますが、まず消防車が入れないと話になりません。

消防車が最大限ハンドルを切って旋回した時に外側のタイヤが描く半径を把握しておく必要がありますし、敷地内の木の高さや、枝の高さ、そしてどこから消防用水を引くかや、水圧が十分かなど。意外と、非常に複雑なんです」

とグラントさんは言う。ちなみに消防保安官とはこうして何千点もの点検を共にして、個人的にもとても仲良くなったそう。

オーランド付近にプロがたくさん働いているが故に、グラントさん以外にも、ゲストスピーカーを招いてこのような話をしてもらえるのもこの学科の醍醐味の一つだ。プログラムを開設してから3年間で、120人のゲストスピーカーを迎えた。

テーマパークの夢世界を紡ぐことは、人を紡ぐこと。テーマパーク業界のそんな一面が窺える。

※本稿は、『世界のヘンな研究―世界のトンデモ学問19選』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』(著:五十嵐杏南/中央公論新社)

テーマパークやカジノ、大麻など、日本に住んでいると不思議に思うユニークな授業が、世界にはたくさんある。本書は、サイエンスライターとして世界各国の科学関連のニュースに触れる著者による、「所変われば学びも変わる」異文化事情を伝える1冊。