アニメを研究対象として見る重要性が出てきた00年代

日本アニメーション学会が立ち上げられた1998年以前では、アニメは映画学や映像学の括りの中で、ポツポツと研究が行われていた。特に関心が集まっていたのは、子供に対するアニメの悪影響、などといったトピックだ。

『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』 (著:五十嵐杏南/中央公論新社)

その後、アニメーションを専門とした学術団体が映像学の中から分化していった。アニメーション分野が独立した最初の頃はイラストを動かすという意味での「アニメーション」で、アニメーションをどう動かせば動きがスムーズに見えるか、それが人間の目とどう関連しているかなどが主に研究されていた。

いわゆるテレビで見る商業アニメが研究対象になったのはもう少し後のこと。研究を後押しした海外からの人気も商業アニメが中心だったが、商業アニメの研究に移行し始めたのは2000年代に入ってからだ。

「80年代は、宮崎勤事件で象徴されるように、アニメファンの男性はちょっと危ない、犯罪者予備軍、という風にオタクが見られていた時代でした。90年代や2000年代になると、普通に漫画やアニメが楽しまれるようになり、オタクに対する偏見がなくなったとは言いませんが、『電車男』のヒットを機に『オタク』が広義的に捉えられるようになり、普通に『アニメが好きだ』と言える社会になりました。アニメや漫画が普通に認知されている時代に育った人たちが研究を始めたことで、今も研究者が徐々に増えています。

海外の人気もあると、『どうしてアニメは人気なんだろう』といった素朴な疑問がマスコミの報道の中で浮かび上がったり、何かがヒットすると『それはどうディズニーと違うんですか』といった質問も飛んでくるようになりました。そのようなことに対する理解を深めるためにも学問体系として、アニメを研究対象として見るという重要性が出てきました」

と須川さんは言う。