アニメ研究は、自分自身の探究

情報収集のために各クールの新作アニメの第1話はほぼ必ず全て見ている須川さんだが、以前のようなあからさまなステレオタイプを含むものや、差別を生むような表現は避けられるようになったと言う。

コミケ開催日の朝の国際展示場周辺(写真提供:Photo AC)

「多様性を尊重するような教育を受けてきた人が業界に流入してきたというのもありますが、SNSの発達で、何かあるとすぐに叩かれるというのもあって。昔ながらの差別的な表現をしている作品はすぐに叩かれて興行的に失敗するので、表現については本当に積極的に配慮がされているものが多くなってきています。特に海外に売っていく戦略をとる人たちは、その国の表現コードに引っかからないような表現に落ち着くと思います。

少女が主人公のもののうち人気なものでは、プリキュアシリーズがセーラームーンのように戦闘美少女路線をとり、強くてなおかつかわいいことが非常にウケている。化粧やドレスアップをして戦うことは、エンパワメントの手段としてメッセージが打ち出されています。

少年が主人公の作品は、昔ながらの男性性を前面に出すというより、「鬼滅の刃」の炭治郎のように優しさや、他人への配慮など、いわゆる「コミュ力」といった能力を持っている。力は強くなくても、人を惹きつけるような魅力。いろんなジェンダーの表現がやっと追いついてきたようだと思います」

と須川さん。

一方で極端な表現をする暴力的な作品もあるが、「かといって、みんながみんな、自主規制のようなものに縛られすぎては、表現は縮こまってしまうでしょう。バラエティに富んだ作品や傾向が見られるのが、アニメの世界とも言えますね」と須川さんは言う。