撮影◎本社・奥西義和
劇団四季で数々の舞台に出演、退団後はさまざまな舞台や映画で活躍していた栗原英雄さん。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』には大江広元役として出演、公家出身ながら北条義時の側近として最後まで支え、尼御台となった北条政子との関係性でもSNSで注目を集めた。2023年3月にはミュージカル『ジキル&ハイド』に出演する。役への向き合い方や、日常の過ごし方について聞きました。(構成◎野口美樹 撮影◎本社・奥西義和)

彼が目を開くにふさわしい瞬間はどこだろう

大江広元を1年間演じてきた『鎌倉殿の13人』が最終回を迎え、「長い旅が終わった」という感じです。頼朝の側近として鎌倉の繁栄のために尽くし、「承久の乱」では御家人たちを率いて鎌倉幕府を勝利に導き、長年の願いだった打倒朝廷を果たすことができた広元。約80年の人生の旅路をともにし、やりきったという感慨に溢れています。

特に視聴者の方から反応が大きかったのは、物語終盤、戦いの中で目を患ってしまった広元が、小池栄子さん演じる政子の演説を聞き、開眼したシーンでしょうか。後鳥羽上皇が北条義時追討の狼煙を上げ、鎌倉幕府がかつてない危機を迎える中、広元は動揺する御家人たちを納得させるための演説原稿を政子のために書きます。しかし、政子はそれを読み始めるも、途中で自分の言葉で語り始める……という場面です。

演出家の吉田照幸さんや三谷幸喜さんとも相談し、一度は「開けなくていいかも」という結論にもなりかけたのですが、史実を調べると、広元の目は平癒したともある。僕はそれをどこかで表現したいなと思っていて。彼が目を開くにふさわしい瞬間はどこだろうと考えた末に、ここ以外にはないという結論に至りました。

恋心を寄せる政子が覚醒して、自分の言葉で語り掛ける姿を広元は絶対に見ようとするはずだ、と。平癒したと言ってもぼんやりとしか見ることができなかったのではと思うのですが、「見たい」という広元の強い意志を感じ取っていただけたのではないでしょうか。