ずっとSNSに写真をあげているパピヨンとチワワの2匹が亡くなってしまい、今は新しく来てくれたチワワ1匹と暮らしています。愛犬は癒してくれる存在でもあります。お世話をしていると、お子さんを持った友達が言っていたことを思い出します。友人曰く、「子どもは可愛いだけじゃないんだよ。親に試練を与える面もある」と。僕は子どもを持たない夫婦……いわゆるDINKsなのですが、愛犬に振り回されながら子どもを持つとはこういうことなのかな、と多少なり想像を巡らせたりします。かわいいだけじゃない、大変なこともたくさんあるけれど、育てることは学びにもなるんですよね。

愛犬と(栗原さんSNSより)

広元を演じている時は座ってばかりでしたが(笑)、ミュージカルでは歌って踊ってと体力が要求されます。日々の体づくりの中で僕が意識しているのは「歩く」こと。よほどのことがない限り、車は使わず電車移動を心掛け、階段や坂道も積極的に歩くようにしています。僕が舞台で演じるのは「日常生活を送っている人」ですから、自然に日常生活で作り上げた機能的な肉体づくりが良いかなと。

「演じる」ということは「想像する」こと

人間観察ができるのも、「歩く」ことのいいところ。汗を流して働いている運送業者さん、ちょっとシルバーグレーの入ったサラリーマン、自転車を一生懸命こいでるお母さん、その後ろに乗っている子ども達……。その人たちが普段どんな生活を送っているのか、歩きながら想像する。

「演じる」ということは「想像する」ことだと僕は思っています。僕は「ジキル&ハイド」の時代に生きていたわけではないから、彼らがどのように生き、どのように考え、どのように選択したか――それは台本や史料を読みながら、想像を膨らませていくしかないのです。

悲しいかな、千年経とうが、人間の本質というものは変わらない。そうした人間を描いているからこそ、19世紀のロンドンが舞台の『ジキル&ハイド』を見ても、僕たちは感動できる。それが舞台のよさ、演劇のよさなのだと思います。たまに人間ではなく、『ライオンキング』みたいにライオンを描いたり、『CATS』のように猫を描いたりということもありますが(笑)。

シェイクスピアは『ハムレット』の中で「演劇は時代を映す鏡」と言っています。エンターテインメントとして楽しんでもらうのが一番ですが、そうした人間の本質や、社会問題といったテーマもお客さんに感じ取ってもらえたら、嬉しいですね。ジキルはなぜその行動をとったのか、エマは? カルー卿は? 幕が開いた瞬間から幕が閉じるまでのそれぞれのキャラクターの人生を見つめ、自分ならどうする?と自問自答してみてください。きっと、そこには新しい発見があるはずです。

2022年12月20日に行われた『ジキル&ハイド』の記者会見(撮影◎本社・奥西義和)

 

◆栗原さんが出演するミュージカル『ジキル&ハイド』は、東京国際フォーラムホールCにて、2023/3/11(土)~3/28(火)まで上演予定

https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2023/