変わるアニソンの価値

世間のアニソンへの目も、この頃から変わりました。それまで「アニソン好き」と公言すれば「オタクだなあ」と言われる風潮があったのは事実です。そのように色眼鏡で見られることが減ってきて、「今日は皆でアニソンを歌いにカラオケ行こうぜ」という空気が、普通の若者の間にも醸成されてきたように思います。

「アニソン好き」は「オタク」というイメージが変わり、若者がカラオケでアニソンを歌うことが普通になっていったという影山さん(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

そういえば、この頃から、それまではまったく呼ばれたことがなかった大学の学園祭からちょくちょく声をかけてもらうようになりました。普通の大学生が堂々と胸を張り、「アニソンが好きです」「影山ヒロノブが好きです」と言う時代がやってきたのです。

しかし、アニソン界で起こった最も大きな変化とは、何よりも21世紀になり、自分の歌を自分で作るアニソンシンガーが増えたことでしょう。

俺がKAGEでアニソンデビューした頃は、作詞作曲は専門の先生が担当して、その先生たちがレコード会社からの発注を受けて曲を作っていました。曲ができると、レコード会社が「今度の曲はあの人に」と振り分けるのが普通でした。

俺たちアーティストが曲を書かせてもらえるのは、せいぜいアルバムの中の一曲程度。俺も「光戦隊マスクマン」のアルバムで一曲だけ作らせてもらいましたが、主題歌を歌ったご褒美の「記念作曲」みたいなものであり、「ありがたく書かせていただく」というニュアンスでしょうか。俺以前だと「科学戦隊ダイナマン」の主題歌を歌ったMoJoさんが、同番組の挿入歌を「富田伊知郎」名義で書いていたくらいで、異例中の異例でした。