『カルテット』が伏線回収ブームのひとつの転機?

世界中で放映されているテレビドラマにとって、伏線回収は制作上の標準装備だ。でもいつから日本では、伏線回収ブームがドラマ界へ有象無象に飛び散っているのか。

映像を脳内で思い偲(しの)ぶと『カルテット』(2017年・TBS系列)が、ひとつの転機になったのでは? というのが推測。

松たか子、満島ひかり、松田龍平、大ブレイク寸前だった高橋一生らが主演。あらすじを書くのもややこしくなるほどの脚本を担当したのは、かの坂元裕二(さかもとゆうじ)氏である。

『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(著:小林久乃/青春出版社)

概括的に説明をすると、共同生活を始めた男女4人は、各々の過去、闇を持っていた。

彼らの共通事項はカルテット=四重奏。楽器を弾くことだ。この四重奏の周りに点在する伏線が、放送回を追うごとに解明されていく。「ええ、あれとあれが繋がっていたの?」という、脚本の巧みな技術にわたしたちは毎週、翻弄された。

恋愛関係、金銭、花言葉……放送1時間内の随所にちりばめられたキーワード。それらを表現した演技は芸術作品だった。

「ミゾミゾする」

「人生、チョロかったー!」

伏線だけではなく、流れてくる台詞も印象深く、台詞を聞いた瞬間、良質の音楽を聴いたような余韻が残っていた。

実は『カルテット』、平均9・8%と話題性と並走することのない視聴率。でも放送中、作品に関する話題が常にSNSでトレンド入りしてくるという、連続ドラマにおける新記録を作り上げて、伝説となった。