伏線ドラマのいいとこ取り

『カルテット』以前にも、国内には多数の伏線を張り巡らせた作品はある。もう少し並べて、ワクワクしていこう。

宮藤官九郎氏の手がける作品もそうだった。ラストシーンに突入するとどんでん返しのごとく、話がひっくり返る。問題解決のヒントが、実はもうすでに登場している……といった、大人が仕掛ける悪戯のようにドラマが作られている。

小泉今日子主演『監獄(かんごく)のお姫さま』(2017年・TBS系列)は、舌をぐるんぐるん巻いた。

女性刑務所で出会ったメンバーが、江戸川(えどがわ)しのぶ(夏帆)にまつわる冤罪、そして妊娠と出産に共感。本来の加害者であるイケメン社長への復讐を誓い、実行していくという物語。

第一話はメンバーが出所した現在から始まる。第二話からは何故、彼女たちが復讐に加担しているかを紐解いていく。女子刑務所という舞台、スリルライドに乗車しているようなスピード感。視聴者の高揚した気持ちをさらに昂(たかぶ)らせる主題歌、安室奈美恵『Show Time』。毎回、伏線が解明されるたびに、各メンバーの有志に心で拍手を贈った。

2019年に放送された『あなたの番です』(日本テレビ系列)に至っては、スタート以前から物語に真犯人のヒントが隠されていると匂わされていた。

一棟のマンションで殺人事件が、次々に起こっていく。犯人は住人の中にいる。放送時間の毎週日曜22時30分になると、視聴者も参加して犯人を考察して、SNSで意見を交わしていく。これまでに放送された伏線ドラマのいいとこ取り、と呼びたい完璧な設定だった。

一棟のマンションで殺人事件が次々に起こっていく『あなたの番です』。伏線ドラマのいいとこ取り、と呼びたい完璧な設定だった(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

ただ所感としては、犯人探しよりも、主演の原田知世が演じた手塚菜奈(てづかなな)にどうしても目が行く。

14歳年下の男性と結ばれた、フリーデザイナーという設定。あまりにも夢があった。ご本人の神々しい美しさを見ながら、自分もこの先の人生を頑張ろうと思っていたのに、まさかあんな展開になろうとは……。