伏線ドラマがストレス解消によく効くワケとは――(写真提供:Photo AC)
純粋ラブストーリー、昼ドラ&昼メロ、ストーカー愛、月9…。サブスクの浸透もあり、世代を超え、かつて放映された過去のテレビドラマが再び注目されるようになりました。そんな中、視聴した連続ドラマは約1500本超、執筆したドラマレビューの本数は約2000〜3000本を超える、生粋のドラマオタク・小林久乃さんは、「平成」以降の作品にこそドラマの魅力がふんだんに詰まっていると喝破します。その小林さんいわく、特に最近流行している伏線ドラマはストレス解消によく効くそうで――。

伏線ドラマは心の癒し

平成ではなく令和に放送されたドラマの話題となるが『マイファミリー』(2022年・TBS系列)という、二宮和也主演のドラマが巷で評判になった。

ゲーム会社の社長の娘が誘拐されるところから、第一話が開幕。一家の周囲にはいくつかの人間関係が存在していて、その娘たちも次々に誘拐されていく。この事件の主犯格は誰なのか。

脚本家・黒岩勉(くろいわつとむ)が仕掛けていく、伏線に次ぐ伏線と誘拐の向こうに隠された物語。それらと拮抗しながら視聴者の間でも、犯人探しが始まった。毎週、放送時にはSNSがお祭り騒ぎだ。

俳優陣を含めた、制作軍が先々のストーリーをよく隠すことができたと拍手を贈りたくなる。数百人以上の人間が関わる連続ドラマの撮影現場。どこで漏洩があるか油断大敵。スポーツ新聞にすっぱ抜かれた日には、努力が水の泡となってしまう。

結果、『マイファミリー』では台本の秘匿に成功。最終話まで伏線を回収し続けて、視聴者の人気を牽引した。

わたしも泣いたり、胸を高鳴らせたりしながら見ていた。そこで端(はし)なくも思った。

「伏線ドラマはストレス解消によく効く」

視聴が始まると、自分も伏線回収せねばと、つい夢中になる。日常が忘却の彼方へとすっ飛んでいく。

リアタイ(放送中のドラマをリアルタイムで視聴すること)中、実はものすごく手がかかる仕事の案件を抱え込んでいて、いささか息苦しさがあった。毎日、煩わしさが勃発。自分を背負い投げしたい衝動に駆られていた。それが『マイファミリー』を見終えるとスッキリしている。

伏線ドラマは集中力を要するので、厄介(やっかい)なことを自然と忘れていたらしい。