丸っこい花。取材に伺った日の朝、見えた幻視だという (22年10月)

研究会のVRで体験したように、レビー小体型認知症の幻視は「怖いもの」「出てきてほしくないもの」が見えたと訴える人が圧倒的に多いようです。

私の場合が特殊なのか、あるいは怖くないものが見えた人は困らないから病院にわざわざ報告しないのか、そのへんはよくわからないんですよ。

そもそもこうして幻視を絵として記録した人というのが少ないらしく、診察の時にお見せした森先生から「本にしてはどうですか」と勧められました。

先生からもう一つ誘われたのが、「みんなの談義所しながわ」という集まりでした。認知症のご本人や家族のほか、介護や看護のお仕事をする人、行政の人などメンバーは多彩です。

私はそれまで、たとえば図書館の職場では検査で1週間休む前に「自分はこういう病気かもしれない」とスタッフに話していました。また地元でボランティアとして長くかかわっていた映画祭や、地域の歴史を勉強する会の主要メンバーにも、3月に診断を受けてから病名を伝えています。

でもそれ以外の人に対してカミングアウトすることはなかった。やはり「自分は認知症だ」と伝えたら相手にどう思われるか、腫れ物に触るように接してこられたら嫌だなという気持ちが強かったのです。

でも「談義所」では、初めて会う人にも自然と今の状況を話すことができました。その後も集まって皆さんと話したり、イベントに参加したりするうちに、こうした場にかかわることが認知症の当事者にとって、すごく大事なことだと思うようになりました。

介護や医療、行政の専門家から最新の知識を得られるのはもちろん、自分と同じ病気の人がいて、その人が元気にやっているとわかる。症状が進んできても、周りの適切なサポートを受けて明るく前向きに生活している人の姿を知れたのは何より嬉しかったです。

だったら、私が幻視についての本を出すことにも意味があるかもしれない。20年2月から出版資金を集めるクラウドファンディングを始め、翌年の8月に幻視のイラスト満載のちょっと不思議な本ができあがりました。

おかげさまで反響も大きく、イラストの原画展を各地で開催しています。「談義所」オリジナルのカレンダーやくるみボタンバッチも好評なんですよ。