アルファベットを口いっぱい頬張る男性。何を言いたいのだろうか (20年1月)

そのほかには、認知症の勉強会に呼ばれたりトークショーでお話ししたりと、退職後もけっこう毎日忙しくしています。最近とても嬉しかったのは、子どもたち向けの認知症の勉強会で話ができたこと。その時も最後にユーチューブの映像を見せたら、ずいぶん印象に残ったようです。

そうして認知症について何かしらの知識が頭に残ってくれれば嬉しいし、それが身近な人の病気の早期発見につながるかもしれません。脅かすわけではないけれど、最近は若年性認知症も増えているので、ご両親だって発症する可能性もある。

そんなふうに話すと、子どもたちも真剣に耳を傾けてくれます。「そろそろ認知症が心配」という大人だけでなく、子どもや若い人など幅広い世代に認知症のことを知ってもらう試みは今後も続けていきたいです。

認知症の当事者になって思うのは、「介護する人/される人」という二項対立で考えるのではなく、「何かがちょっと苦手な人がいる」ことに寛容な社会であってほしいということです。

年のせいもあるのですけれど、私の場合は動きが遅くなったり、不器用になったり、言葉が出にくかったりする。それでたとえばレジの支払いにとまどっても、ちょっと待ってくれたら嬉しい。

私が参加している「みんなの談義所しながわ」でも、最初は言葉がなかなか出なかった人が、周囲が「待ちますよ」という雰囲気でいると、どんどん言葉が出て、驚くほど明るくなる姿を見てきました。

認知症は特別なものではない、こんなふうに生きている私みたいな人もいる。そんなメッセージを、今後も発信していければと願っています。