企業研修で産婦人科医が伝えたいこと

大吉 高尾先生は、企業に出向いて、生理や更年期といった女性特有の健康課題について研修されているそうですね。いまの時代、需要は高まっているんでしょうか。

高尾 そう感じますよ。男性が中心となって働いていた社会に、女性が進出してきた。一緒に仕事をするためには「知る」ことが不可欠です。

私が企業研修をはじめたのは2011年ごろですが、当時と比べてもそう考える企業が増えたと感じますし、実際依頼も多いです。

現在は、過渡期なんですよ。企業が研修をするのには「企業価値を上げるため」という意図があります。

SDGs(持続可能な開発目標)は国際社会共通の目標であり、日本政府も強く推進していますが、17ある項目のひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。

世界に目を向けると、企業が女性を支援したり活躍を推し進めたりすることは評価の対象となり、企業価値がアップします。「SDGs投資」という言葉もあるくらいですから、株価をも左右しかねない。

女性の健康課題を知るための研修は、そのために「やっておかなきゃいけない」ことになるのでしょう。

企業価値を上げるということよりも「お互いを理解する」ことに目を向けてもらいたいという高尾先生(撮影:宮田浩史 写真提供:辰巳出版)

産婦人科医からすると、企業価値を上げるということよりも、「お互いを理解すると、チーム全体の動きもよくなるよね」という現場レベルのことに目を向けてもらいたいと思うのですが、それでも研修が増えていること自体はよい傾向だと思います。

※本稿は、『ぼくたちが知っておきたい生理のこと』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。


ぼくたちが知っておきたい生理のこと』(著:博多大吉、高尾美穂/辰巳出版)

漫才コンビ博多華丸・大吉の博多大吉さんと、NHK「あさイチ」でもおなじみの産婦人科医・高尾美穂先生が「生理」をテーマに語りあいました。
生理のメカニズムについての解説はもちろん、男女約480人によるアンケートの回答も交えながら、生理痛やPMS(月経前症候群)への理解を深めたり、生理にまつわるコミュニケーショントラブルや社会レベルの課題について、一緒に考えます。