『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』(原田ひ香・著/中央公論新社)

原田 ありがとうございます。私も書きながら、子どもの頃、母の荷造りを手伝っている時に、「モノを送るってこんなに手間がかかることなんだよ。送ってもらったら、ありがたいと思わないといけないね」と言われたことを思い出しました。世代によっては、お母さん目線で読んでいただけるのかな。

上白石 きっとそうでしょうね、そこで伺いたいんですが、どの物語も親子それぞれの目線が交差しますよね。書く時は、原田さんの中に2人いるのですか?

原田 小説の前にドラマのシナリオを書いていたことが影響しているのか、頭の中で観た映像を書き取っているんです。

上白石 ああ、2人いるのではなく、映画監督の視点なんですね。

原田 ええ。全体を見ながら俳優さんに演じてもらうみたいな。表現を手直しする時も、たとえば「上白石さん、今のところもうちょっと強めにやってもらっていいですか」と指示を出すつもりで。

上白石 物事を俯瞰しているんですね!

「客観視しないと、落ち込んだ時はどこまでも落ち込みますし、ちょっとうまくいくとすぐ調子に乗っちゃう。だから第三者の視点で自分を冷静に見るようにしないといけない」(上白石さん)

原田 上白石さんのお書きになった『いろいろ』からも、俯瞰する眼差しを感じます。

上白石 それは意識しているんです。客観視しないと、落ち込んだ時はどこまでも落ち込みますし、ちょっとうまくいくとすぐ調子に乗っちゃう。だから第三者の視点で自分を冷静に見るようにしないといけない。これは両親の教えでもあるのですけど、それが今回書くうえで役に立ったかなと思います。

原田 それって、演じるうえでも大切なことだったりしますか?

上白石 はい。自分の芝居を常に上から見ていなくてはいけませんし、とくに舞台では空間をちゃんと把握する必要があります。それはめちゃくちゃ難しいことで、いまだによくわからないのですけど。