原田ひ香さん(左)と上白石萌音さん(右)撮影:大河内禎
2022年の演劇界の成果を顕彰する第30回読売演劇大賞の最優秀女優賞を上白石萌音さんが受賞しました。女優や歌手、声優としても活躍する中、2022年は舞台『千と千尋の神隠し』やミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』に出演。読書好きとしても有名な上白石さんが、現在、東海テレビ・フジテレビ系で連続ドラマが放送中の小説『三千円の使いかた』著者の原田ひ香さんと対談した、『婦人公論』2021年10月12日号掲載の記事を再配信します。

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女優として活躍しながら、歌手、声優としても才能を発揮する上白石萌音さんが、初のエッセイ集を上梓。37歳で文壇デビューを果たした作家の原田ひ香さんと、大好きな本について語り合いました(構成=平林理恵 撮影=大河内禎)

デビュー10年の節目に、今を記録するのもいいかも

原田 実は私、萌音さんの大ファンなんです。

上白石 ホントですか? ありがとうございます!

原田 初のエッセイ集『いろいろ』を読ませていただきました。感心したのは、さらっとした文体でとっても読みやすいのに、あちこちでコリッコリッと噛み応えみたいなものを感じさせること。

上白石 「エッセイを書いてみませんか」と、お話をいただいた時は、私に書けるのだろうかと不安でした。中学生の頃の読書感想文は苦手でしたし(笑)。迷っていたら、「いいものを書こうとしなくていい、ありのままを記録してみてください」と担当編集者さんに背中を押されて心を決めました。デビュー10年の節目に、今を記録するのもいいかもしれないな、と。

原田 描写が生き生きとしていて、書き出しや結びの表現も豊か。これまでたくさん本を読んできたんですか。

上白石 本は小さい頃から大好きで、好きな言葉をノートに書き留めていました。今回も、この書き出しが素敵だな、この結びはかっこいいなと感じた文章をヒントにして、ひと工夫を加えたところがあります。

原田 なるほどなるほど。蓄積があるからこそのアレンジですね。