規範によって配偶者を縛ることで、夫婦の安定が保てている
こうした反不倫規範の高さを、神原文子(かんばらふみこ)は『現代の結婚と夫婦関係』のなかで2つの理由によって説明している*1。
一つは「性関係規範が守られなくなれば社会的秩序が乱れるという『価値志向』」、そしてもう一つは「夫婦関係の安定をはかるために、配偶者によって性関係規範が順守される必要があるという『動機志向』」である。
神原は後者について、反不倫規範が高いのは既婚者に見られる特徴であることを指摘し、こうした夫婦は愛によって夫婦関係を維持するかわりに、配偶者が規範を遵守するよう期待することによって夫婦関係を維持していると論じている。
つまり、規範によって縛る対象は、一般的な社会の構成員ではなく自身の配偶者であり、仮に夫婦間に愛のある性交渉がなくなったとしても、不倫をしないという規範によって配偶者を縛ることで、夫婦の安定が保てているといえる。