他国と比較すると、日本は不倫に対して緩めの態度
もちろん信仰心だけで説明できるわけではなく、例えばフィリピンでは姦通罪に似た法律が施行されているといった事情もある。
調査時点の2018年には台湾にも姦通罪があったが、2020年5月に違憲判決が出て即日廃止された。世界的にも姦通罪は廃止の傾向にある。
その背景には、他国が姦通罪を次々と廃止していることにならった波及効果や、国際会議などの場でルールを共有し、世界的に一定の方向にルールが定まっていくといった理由がある*3。
他国と比較すると、日本は不倫に対して緩めの態度である。もちろん調査に参加した国々の反不倫規範は全体的に高水準であり、日本と他国を比較しても大幅な差異は認められないものの、比較的低い規範水準にあるといえる。
こうした傾向は他の調査でも同様に支持されており、2013年に行われた反不倫規範に関する調査でも、39カ国中下から9位という水準であった*4。
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1 神原文子(1991)『現代の結婚と夫婦関係』培風館
2 個人レベルで宗教的な敬虔さと不倫の有無を見た分析として、例えばMunsch (2015) などが挙げられる。Munsch, C. L. (2015). Her support, his support: Money, masculinity, and maritalinfidelity. American Sociological Review, 80( 3): 469-495.
3 Frank, D. J., Camp, B. J., & Boutcher, S. A. (2010). Worldwide trends in thecriminal regulation of sex, 1945 to 2005. American Sociological Review, 75( 6):867-893.Frank, D. J., & Moss, D. M. (2017). Cross-national and longitudinal variations inthe criminal regulation of sex, 1965 to 2005. Social Forces, 95( 3): 941-969.
4 Pew Research Center による。詳細は以下を参照。
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2014/01/14/french-more-accepting-of-infidelity-than-people-inother-countries/
※本稿は、『不倫―実証分析が示す全貌』(中公新書)の一部を再編集したものです。
『不倫―実証分析が示す全貌』(五十嵐彰〈著〉 迫田さやか〈著〉/中央公論新社)
配偶者以外との性交渉を指す「不倫」。毎週のように有名人がスクープされる関心事である一方、客観的な情報は乏しい。経済学者と社会学者が総合調査を敢行し、海外での研究もふまえて全体像を明らかにした。何%が経験者か、どんな人が何を求めてどんな相手とするか、どの程度の期間続いてなぜ終わるか、家族にどんな影響があるか、バッシングするのはどんな人か。イメージが先行しがちなテーマに実証的に迫る。。