21世紀の基幹産業は「文化産業」
IMFによる救済が本格的に始まった1998年、当時の金大中大統領は「文化産業」を新時代の産業の一つに挙げ、21世紀の基幹産業と宣言した。
「文化産業を基幹産業にするとはどういうことなのか?」と、就任演説の中継を職場の先輩と見ながらイメージできなかったことを覚えている。
一般的に基幹産業とは、一国の経済活動の基盤となる重要な基礎産業のことを指す。鉄鋼業、エネルギー産業、機械産業、化学工業や運輸業など、主に製造業がそれに当たることは理解できる。
しかし、文化は基幹産業になりえるものなのか。
通貨危機をきっかけに様々な転機が訪れた。中堅産業は途上国に競争力を奪われ、エネルギー輸入にほぼ全面的に依存する構造が非常に重くのしかかる。
しかし、文化産業は創造力によって、新たな雇用と国民所得を増加させることができる分野であった。
さらに文化産業において生産されるコンテンツは、その国の文化や情緒的価値を丸ごと内包している。
その消費は経済的な影響だけでなく、個人的な価値観にも大きな影響を与える可能性がある。
そんな一石二鳥の効果を得ることができる未来の産業であることを、金大中大統領は予見していた。